「遺産分割を代償分割で行うが、遺産の時価は、いつの時点で評価するのか。
周囲はみんな、相続開始時というが。」 というものです。
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答は、ズバリ、分割時です。
民法903条の特別受益の規定や、1029条の遺留分算定基礎が「相続開始時」(=亡くなられたとき)を規定しているために、誤解が多いのでしょうが、
遺産分割協議が長期にわたることも多く、
また、相続税がかからないケースなど、
被相続人名義で数十年も分割が放置されていることも多いのです。
例えば、30年前のおじいさん名義の不動産の分割を決めるのに、
相続人Aさんが取得し、他の相続人Bさんに代償金を払うことになって、
30年前の価格で評価し、Bさんに代償金を払うとしたら、
Bさんは怒ってしまうでしょう。
判例でも、現実に財産を分配する時点での時価を基準とすべし、としており、(名古屋高裁昭和47年6月29日)
学説でも定説となっています。
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お客様のお話では、税理士さんも弁護士さんも「みんな」相続開始時だという、
分割の時だというのは、家庭裁判所の書記官だけだ、とのこと。
家裁の書記官が、せめて正しい回答をしてくれたことで、
ちょっとホッとしましたが、
確かに相続開始時とすれば、時点が確定するので、計算しやすく、
遺産分割時としたら、いつの日とするか、相続人で時点の合意が必要となり、
大変かもしれません。
関与の専門家は、そのため、相続開始時とご指導なさったのかもしれませんが、
そこはよくご相続人様が理解できるように説明していただいたほうがいいでしょう。
昨今のように、株や不動産の現在の「時価」が半年前の「時価」と激変している場合には、
とても大きな問題だからです。
ご無事にご相続が進まれますように。
お祈りしました。