インフォームド・チョイス
 京都大学医学部の福島雅典先生のお話に、「インフォームド・チョイス(専門家説明に基づく患者の選択権)」という言葉が登場します。

 医学の世界では、「インフォームド・コンセント」という言葉は、専門家の説明義務と訳されて、もうだいぶおなじみです。
 風邪をひいてお医者様にかかると、薬の一粒一粒まで名称・効用・服用方法・副作用の注意など、こちらの目を覗き込んで、噛んで含めるように説明してくれます。薬袋には、カプセルや錠剤のカラー写真もBJプリンタで印刷されています。
 ああ、日本の医療も変わったな、と実感します。
 
 ところが、福島先生は、それでも足りない、というのです。
 治療は「エビデンス・ベイスド・メディシン」(=根拠に基づく治療)でなければならないし、その治療を受けるに際しても、「ペイシャント・セルフ・デターミネイション・アクト」(=患者の自己決定権)が行使されなければならない。
 そして、医師専門家から、きちんと説明を受けた上で、患者は自己決定権に基づいて、最も納得できる治療法を選択できねばならない、といいます。
 それが、「インフォームド・チョイス」です。
 当然に、医師は、あらゆる治療の可能性に精通し、すべての治療法を提示し、そこから患者に治療法を選択してもらわねばなりません。
 最新治療法のすべてに目を通していない医師は、責任を負えないことになります。

           ☆  ☆  ☆

 これは、我々税務専門家にも、そのままあてはまります。
 税金制度は複雑の一途をたどり、そのマネージメント次第で、お客様の税金は、計り知れない結果を生みます。
 バブルが崩壊して10年。
 所得税対策・相続税対策を「専門家」のすすめに従ったばっかりに、「節税対策破産」を迎えている例が、そこかしこにあります。
 お話を伺うと、よくわからないけど、そう言われた、と、10年前の資産シミュレーションの「提案書」を後生大事に持っていらしたりします。
 その救済のために、いままた「節税」を唱う専門家さえいるほどです。
 
 基軸を戻しましょう。
 主人公は誰でしょう。
 お客様ご自身が、自分の人生の主人公として、自分の資産や経営や家族や税金の方針決定権を持つべきです。
 専門家は、お客様にもっともよい方針を決定していただくためにこそ、すべての知識と能力と誠実を注ぐべきです。

 税務や会計の専門家は、最新の知識を整えて、最大限の知識と可能性と方法を試算し、提示し、きちんと理解していただき、お客様に選択していただき、そしてその後の経済変動・税制改正の説明を行いながら、アフターフォローにも同行すべきです。
 少なくとも、資産・経営の専門家は、お客様の生涯に寄り添うだけの資質と覚悟が必要でしょう。
 
 お医者様の世界では、ようやく専門家責任の基本の一歩を踏み出したようです。
 我々税務専門家も、お客様の深い信任にこたえるべく、もっともっと猛勉強し、データをとり、お客様に深くお話を伺い、お客様に主人公として選択していただけるようにがんばらねば!と決意しています。
                 Sep.23rd. 2000 みゆき wrote.
by expresstax | 2001-01-01 00:00 | プロフェッショナル

税理士飯塚美幸のひとことメッセージ
by expresstax
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自己紹介
税理士・中小企業診断士

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松木飯塚税理士法人
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電話 03(5413)6511

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 人に会うのが大好きで、現場第一主義。
 この職業を選んだのも、たった一度の人生で、いろんなお立場の、いろんな職業のお客様と人生をともにして生きていく素晴らしさと醍醐味を知ってしまったから。
 相手を信じて情熱で意気投合してしまう。
 税理士の仕事は、お客様の人生と懐にしっかりと寄り添って、ともに手を携えて生きていくことだと信じる。 

 "Always Keep Faith"。
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