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資産税の税理士ノート

相続株の売渡請求権の生存競争ゲームにご注意!

 平成18年5月1日に施行された新会社法対応第2弾です。

 3月決算の会社ならこの5月6月の定時株主総会で定款変更決議をあげます。
 そのポイントのひとつに、相続株の売渡請求規定があります。

 定款で定めることにより、譲渡制限が付されている株式を相続した者に対し、会社は、株式を売り渡すことを請求できる規定が新設され(新会社法第174条)、事業承継対策として期待されています。

 株式譲渡制限会社の場合、株主の株譲渡には会社(取締役会や株主総会)の承認が必要ですが、従来は相続での一般承継は制限できず、どんな相続人に引き継がれようが、会社は防衛不可能。

 かくして、株主さんの株が、ネズミ算式に散り散りになってしまうことも多く、事業承継の難問だったのです。

■超強力な相続株の売渡請求権-売渡をかけられたら問答無用

 会社定款に、この相続株の売渡請求権規定を導入したとします。

 株主に相続が起きたら、株主総会を招集し、特別決議で相続株を承継する相続人に対し、自社株の会社への売渡請求を決議します。

 株主総会は議決権の過半数が必要、特別決議には2/3の賛成が必要ですが、この株主総会成立や特別決議において、利害関係人である相続人は、定数を構成せず、議決権を行使できません。つまりほぼ強制的に売渡請求決議が上げられてしまいます。

 売渡請求は相続から1年以内。価格は会社と相続人の協議で決めますが、20日以内に裁判に申立てて価格決定してもらうこともできます。極めて強力に株式分散を押さえていくことができます。

■会社の相続株買上の財源規制に注意-売却相続人には、譲渡課税の税メリットも

 ところで、会社が買上ることができる価格は、会社の剰余金の額など、配当可能原資に限られます。

 したがって、買取価格決定を受けてもこの原資に足りなければ、事実上買上はできず、1年以内に会社が買い上げない場合は、決定は無効となり、相続承継を認めることになります。

 一方、会社に時価で売渡した相続人の株譲渡の課税は優遇されています。

 通常自社株を会社に売ると、額面を超えた部分は、配当所得課税を受け、額が多いと最高で50%税率課税を適用されますが、相続株の場合は20%の分離譲渡課税で済むのです。

 さらに、株式相続にかかった相続税を取得費として原価にできるためさらに課税は軽減されます。これは相続開始から3年10ヶ月以内なら可能です。

■支配権逆転もあり-株主の生存競争ゲームにならないために

 問題は、この規定を定款で定めた場合、支配株主が先に亡くなった場合も、全く事態が逆転する可能性があることです。

 少数株主が支配株主の相続人に対し株式の売渡請求決議をかければ、議決権を持たない支配株主の相続人は、財源規制の範囲で支配権は譲り渡さねばならなくなります。

 では逆転防止策はあるでしょうか?

 ①定款変更で種類株制度を導入、少数株主には配当優先の無議決権株式を割り当てることができれば、回避できるでしょう。

 ②取締役会設置会社として、取締役を支配株主派で占めれば、仮に相続株売渡請求条項があり売渡請求決議されても、その後取締役会で請求決議を否決、売渡請求しないことができます。

 ③そもそも定款にこの条項を定めないこと、かもしれませんが、別途の分散防止が必要です。
 つまり、事業承継の少数株主対策として有効な制度ですが、諸刃の剣です。

 ぜひ積極的に取り入れたい制度ですが、今後の実務運用や自社の状況を見極め、万全な対策を。
by expresstax | 2006-06-06 23:40 | 耳より税金情報