老人ホーム入所後自宅建替えの小規模宅地特例・2、そして不動研様講演
2017年 12月 08日相続税の小規模宅地の特例の適用が可能かどうか、の問題。
これについて、どう考えるべきなのでしょうか。
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明確に記載された質疑や書籍はなく、
TAINS(税理士会税務判例データベース)で検索しても出てきません。
しかし、これについては、適用可能と考えるべきと思います。
根拠は、次の通達です。
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租税特別措置法関係通達69の4-8( 居住用建物の建築中等に相続が開始した場合
被相続人等の居住の用に供されると認められる建物(被相続人又は被相続人の親族の所有に係るものに限る。)の建築中に、又は当該建物の取得後被相続人等が居住の用に供する前に被相続人について相続が開始した場合には、当該建物の敷地の用に供されていた宅地等が居住用宅地等に当たるかどうか及び居住用宅地等の部分については、69の4-5《事業用建物等の建築中等に相続が開始した場合》に準じて取り扱う。(以下略)
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ここで、「69の4-5《事業用建物等の建築中等に相続が開始した場合》」というのは、次の通達をいいます。
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租税特別措置法関係通達69の4-5(事業用建物等の建築中等に相続が開始した場合)
被相続人等の事業の用に供されている建物等の移転又は建替えのため当該建物等を取り壊し、又は譲渡し、これらの建物等に代わるべき建物等(被相続人又は被相続人の親族の所有に係るものに限る。)の建築中に、又は当該建物等の取得後被相続人等が事業の用に供する前に被相続人について相続が開始した場合で、当該相続開始直前において当該被相続人等の当該建物等に係る事業の準備行為の状況からみて当該建物等を速やかにその事業の用に供することが確実であったと認められるときは、当該建物等の敷地の用に供されていた宅地等は、事業用宅地等に該当するものとして取り扱う。(以下略)
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つまり、建築中に相続となった場合でも、事業供用が確実ならば事業用宅地と扱う、
それと同様に、居住用とすることが確実なら、居住用宅地として扱う、というものです。
つまりここで、建替えして被相続人が事業や居住の用に、結果的にそれぞれの用途に供していない当該建物の敷地についても、認めるとしているのです。
これについて、「租税特別措置法通達逐条解説」(大蔵財務協会平成23年度版、これが最新(^^))では、次のように解説しています。
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特例の適用がある居住用宅地等は、相続開始の直前において被相続人等が居住の用に供していた宅地等をいうものであるから、居住用建物の建築中又は居住用建物の取得後、現に被相続人等が居住の用に供する前に相続が開始した場合には、その建築中の建物又は取得に係る建物の敷地の用に供されている宅地等については、特例の適用がある居住用宅地等に該当しないことになる。
しかし、居住用宅地等の場合には、それが全ての者に共通して必要とされる生活基盤であることからすれば、居住の継続という観点では、建築中等の建物の敷地の用に供されていた宅地等についても、現に居住の用に供されている建物の敷地の用に供されていた宅地等と同様の必要性が認められるので、被相続人等の居住用宅地等であるかどうかの判定を相続開始の直前の一時点で行うのは、この特例が設けられている趣旨から見て実情に即したものとはいえないこととなる。
そこで、69の4-8は、建築中等の居住用建物の敷地の取扱いについて、69の4-7による居住用宅地等の範囲の取扱いを踏まえて、整備を図ったものである。その具体的な判定要件を示すと、次のとおりである。
(1) 建築中等の建物は、被相続人又は被相続人の親族の所有に係るものであり、かつ、被相続人等の居住の用に供されると認められるものであること。
(2) 原則として、相続税の申告期限までに、被相続人又は被相続人の親族の所有に係る建築中等の建物を次に掲げる被相続人の親族が居住の用に供していること。
① 当該建物又は当該建物の敷地を取得した親族
② 生計を一にしていた親族
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ここでズバリ、本法本文を逐字解釈すると適用対象とはいえないが、制度趣旨から、特定居住用宅地等に該当するものとして取り扱う、としています。
つまり、建築中相続で、被相続人が一度も居住の用に供したことのない建物(新居)でも、その後の居住用とすることが見込めれば、その新居の敷地も、居住用建物の敷地として認めると。
であれば、被相続人が適格な老人ホームに入所する=居住の用に供することができない事由で相続開始の直前において居住の用に供されていなかった場合も、その事由で居住の用に供されなくなる直前の被相続人の居住用の宅地等を含む(措法69の4①柱書)のですから、建替後の新居も敷地も、居住用建物の敷地として認めることになるでしょう。
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こうして、これまで老人ホーム入所後建替があっても、新居への親族の継続居住等の要件が満たされていれば、
通達関与のOB先生方が、適用可とし、
これまで特段税務上の否認の事件の報道もなく、
裁決や訴訟にも上っていない状況が呑み込めます。
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ただ気になるのは、適用不可を、デカデカとホームページに記載しているのが、
国税サイドではなく、
民間税理士法人さんたちだということです。
納税者不利となる見解を、わざわざ取り立てて強調するのはなぜでしょう。
民間税理士であれば、お客様を後ろから刺すようなことは、
あってはならないと思うのですが、
どうなのでしょうか。(-_-)#
ちょっと腑に落ちず、よほどの理由、例えば、報道はされなくても、
それらの税理士法人さんで否認された事例があったのだろうか、
などとツラツラ考えています。(?_?)
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日本不動産研究所さんの定例講演会に参加しました。
こんど事務所セミナーでお招きする吉野薫先生の基調講演がありました。
ご担当部署の先生方にもご挨拶できました。
ありがとうございました。
ありがとうございました。