ありがとうございます。
先週、平成28年1月24日付日経新聞の
「『マンション節税』防止 高層階、相続税の評価額上げ」記事についてです。
新聞を読んで、あーあ、と思っていましたが、ご質問をいただきましたので、
やはり、ここでも書きますね。
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現在は、マンション1戸の固定資産税課税標準は、建物の全体の固定資産税評価額を持分割合=専有面積割合に按分した価額とされています。
それを、「実際の物件価格に合わせ、階によって評価額を増減するよう計算方法を見直す。」というのです。
「高層マンションの20階は1階の10%増し、30階は20%増しといったかたちで一定の補正を行う案が有力だ。」そうです。
総務省と国税庁が協議して、今年平成28年秋に総務省令改正案、税調で議論し、平成29年に省令改正、平成30年1月から実施、というタイムスケジュールまで書かれています。
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さて、本気で、財務省と総務省が、固定資産税評価基準の見直しに動くのか、というのがご質問です。
お答えとしては、抜本的な評価基準改正が必要なので、即座には、考えにくいのですが、
昨今の財務省や総務省の無茶ぶり理屈抜きのひたすら増税志向税制改正の流れからは、
あり得なくもないですかね、というところです。
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現行の固定資産税評価基準の原則では、
家屋は、売買価額でもなく相場時価でもなく、再調達価額で計算してきました。
再調達価額を基礎に、基準年ごとに経年減価計算を行います。
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固定資産評価基準 第2章 家屋 第1節 通則
一 家屋の評価は、木造家屋及び非木造家屋の区分に従い、各個の家屋について評点数を付設し、当該評点数に評点一点当たりの価額を乗じて各個の家屋の価額を求める方法によるものとする。
二 各個の家屋の評点数は、当該家屋の評点数は、当該家屋の再建築評点数を基礎とし、これに家屋の損耗の状況による減点を行って付設するものとする。この場合において、家屋の状況に応じ必要があるものについてはさらに家屋の需給事情による減点を行うものとする。
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そしてマンションのような「区分所有権」(建物区分所有法第2条(定義))の場合は、
区分所有権を有する人たち全員で、建物の共有部分と土地を持分に応じて共有します。
でも、建物は、構造上1棟で成立し、どの1室を欠いても、建物として成り立ちません。
1階の101号と、20階の2001号の1㎡あたりの家屋の再調達価額は、同じです。
そのため、区分所有者の所有家屋の専有部分と共有部分の評価の算定には、
1棟の再調達価額を、専有面積割合で按分するという評価方法を採用しているのです。
また、上記の二のうち、「家屋の需給事情による減点」とは、
「家屋の減点補正率は、建築様式が著しく旧式となっている木造家屋、所在地域の状況によりその価額が減少すると認められる木造家屋等について、その減少する価額の範囲において求めるものとする。」とされています。(固定資産評価基準解説家屋篇第2節六)
つまり、草葺の家屋等は、再調達価額は、今となっては高額となったとしても、最近の生活様式に適合しない家屋は、需給上価額が減少するので、減点補正率を適用しなさいよ、としています。
今回報道にあるように、階数による増加点補正という基準を導入するには、根幹から評価方法の見直しをすることになります。
それに、階数で、本当に高いフロアに加点すべきなのか、
震災後は、低層階の方がよかったじゃないか、
空しか見えない高層階より、緑の見える4階くらいの方がいいじゃないか、
方角は、東南の方がいいとは限らないだろう、いまの共同戸建てだって方角調整はしていないじゃないか、
隣地に高層ビルやタワーマンションが建って、眺望が得られない場合も加点するのか、
マンションの分譲販売だって、1期販売と2期販売で、どんどん価格を変えているじゃないか、
などなど、
一律に高層階に加点べきかどうかは、評価基準自体に遡って、
日本不動産研究所や鑑定士協会さんと、大いに研究してもらって、初めて始まるお話でしょう。
固定資産税は、収入があろうがなかろうが、
所有するだけで、毎年現金払いの税金です。
担税力無視の税金なので、その基準を改定するのは、とても重大な変更となるからです。
それを、政策目的や担税力の異なる相続税の評価に準用してきたのが歴史ですから、
相続税評価のために、固定資産税負担を引き上げるという結果となるとすると、
本末転倒となります。
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とはいえ、全国知事会や全国市長会、町村会から固定資産税の増税の訴えを受けている総務省さんにとっては、
マンション高層階について、加点方式で固定資産税評価額が増額でき、増税できるなら、渡りに船。
財務省・国税庁からの要望があったとあれば、
固定資産評価基準の従来の法則なんぞ、平気で踏みにじって、政令・通達改正、堂々と増税、
というのも、ありえなくもないのでしょう。
あるいは、総務省さんのガードが堅く、従来基準の見直しに及び腰となるのであれば、
国税庁サイドで、調査研究の上、財産評価基本通達見直しを行う、 というところでしょう。
でも、それがさくさくできるなら、総務省まで、コトを持ち込まなくて済むはずでした。
さあ、どうなるでしょうか。
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お客様たちから、続々と、確定申告のご資料が届いています。
今日、届いた箱を開けてみたら、大きな伊予柑とフルーツトマト、その下にご資料が入っていました。
つまり、資料と箱の隙間を埋める詰め物=アンコだったんですね。
さっそく、美味しく戴きながら、着手させていただきます。
ありがとうございました。