債務が大きく、経営陣が高齢化したため、会社を閉鎖したいとのご意向です。債務整理が課題です。
融資を受けている銀行さんに、借入条件の緩和を申し出たら、決算書を要求され、決算書を見せたら、「同族への貸付金が残っているので、それを返してもらってからにしてくれ」と言われたそうです。
どうしましょう、と困っていらっしゃいます。
拝見すると確かに同族会社への「貸付金」が資産の部に載っています。
これは銀行さんの言い分がもっともです。
時折、健全企業でも、同族への貸付金や仮払金がを資産の部に堂々と記載したままの決算書を目にします。
対外関係者からは、仮払の整理をするなどの決算能力のない、劣った会社という判断を受けます。
同族への付け回しを平気でする、公正さや清潔さに欠けた会社というレッテルを貼られます。
対税務しか考えない残念な決算書です。
内容をよくみると、社長様一族への未払報酬などが多額にあるにもかかわらず、借入や未払残には載っていません。
つまり、同族貸付金は、精算しようと思えば精算できるのに、それをしないで、やっつけで決算を組み、おそらく銀行の借入残との照合もなく、誤った内訳明細書を作っているのです。
これでは、今からでも誤った前期の決算をもう一度精査して正さねばなりません。
そして進行期の期中ででも、正しい仮決算を組み、外部関係者に提示できるようにしなければ、理解は得られないでしょう。
読み込んでいて、やりきれない気持ちになりました。
社長様たちが夜も日もなく働いて築き続けた事業を、せめて債務超過に転落したどこかの時点で、どうして回復の手だてを図らなかったのか。
それができないなら、どうしてどこかの時点で、一声ストップを掛けないのか。
財務は、会計は、そのためのデータであるはずです。
ストップを掛けたら、顧問契約がとまり、顧問料収入が減ってしまうとか、そしたら所長になんと言われるだろうとか、どうせ赤字会社なのだから、税務調査もないだろうから、とか、とにかく自分の担当の間は、社長につらい話はとてもできない、とか、あってはならない会計人の光景が、目に浮かんできます。
お預かりした決算書資料を机に広げて、気の遠くなるような会計業界の構造の前に、ため息をついています。