2011年 03月 07日
先祖伝来の土地の測量費は?
数年前、所得税の税務調査があったそうです。
当初申告の際に、駐車場や貸付にしていた土地の測量費を、
不動産所得の経費としていたそうなんですが、
調査官は、これは、土地の原価算入であり、不動産所得の経費とはならない、
しかし、将来土地を売却するときの原価になるのだから、ちゃんと保存しておきなさい、と。
押し切られて、やむなく認めてしまい、しっかり追徴税額をとられてしまったそうです。
そして、今回、土地をご売却。
晴れて、そのとき否認された測量費を落とせますね、勇んでおられました。
そうですね、と拝見すると、ちょっと待って下さい。
売却なさった土地は、先祖伝来のものなので、そもそもの取得原価は、無きに等しい。
こうしたときは、概算取得費として、売価の5%を原価とすることが認められています。(租税特別措置法31の4)
でも、その概算取得費を適用すると、使うつもりだった土地の測量費を、
原価とすることができません。
測量費のほうが、概算取得費を上回っていれば、実額を使います、ともできますが、
概算取得費のほうがはるかに高く、有利なので、測量費は採用できません。
つまり、この土地についてかけた測量費は、そのときの不動産所得の経費としない限り、
結局何の経費にもできないことになるんです。
でも、不動産所得の経費には、できなかったんですよね?
お客さまは、不安気に、お尋ねになります。
とんでもない!
現に、測量をなさっていた土地は、賃貸にしていた土地なのですから、
権利の確定や、賃貸借契約の明示、賃貸利用地の維持管理のための費用として経費じゃありませんか。
これを、所得税の通達では、こうも書いているんです。
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(土地についてした防壁、石垣積み等の費用)
所得税基本通達38-10 埋立て、土盛り、地ならし、切土、防壁工事その他土地の造成又は改良のために要した費用の額はその土地の取得費に算入するのであるが、土地についてした防壁、石垣積み等であっても、その規模、構造等からみて土地と区分して構築物とすることが適当と認められるものの費用の額は、土地の取得費に算入しないで、構築物の取得費とすることができる。
上水道又は下水道の工事に要した費用の額についても、同様とする。
(注)
1 専ら建物、構築物等の建設のために行う地質調査、地盤強化、地盛り、特殊な切土等土地の改良のためのものでない工事に要した費用の額は、当該建物、構築物等の取得費に算入する。
2 土地の測量費は、各種所得の金額の計算上必要経費に算入されたものを除き、土地の取得費に算入する。
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測量費は、まず、必要経費かどうかの判定をして、必要経費に算入されない部分を、土地の取得費にしなさい、と言ってるんですね。
お客さまは、びっくりされています。
え゛ーー!
こうした説明をせずに、否認して、将来譲渡の原価になるから良いじゃないか、と言い残していく調査官って、
なんだかなあ、です。
税務調査のときって、
もっともらしい否認をされても、
セカンドオピニオンをとるくらいのつもりで、
専門家の意見を集約してもらえるといいかな、とお客さまとお話しをしました。
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所得税の確定申告では、手続きをなさったお客さまは、電子申告で送信。
贈与税は、電子申告できませんから、書類で提出します。
はい、アナログです。(^^ゞ