インフォームド・チョイス

 京都大学医学部の福島雅典先生のお話に、「インフォームド・チョイス(専門家説明に基づく患者の選択権)」という言葉が登場します。

 医学の世界では、「インフォームド・コンセント」という言葉は、専門家の説明義務と訳されて、もうだいぶおなじみです。
 風邪をひいてお医者様にかかると、薬の一粒一粒まで名称・効用・服用方法・副作用の注意など、こちらの目を覗き込んで、噛んで含めるように説明してくれます。薬袋には、カプセルや錠剤のカラー写真もBJプリンタで印刷されています。
 ああ、日本の医療も変わったな、と実感します。
 
 ところが、福島先生は、それでも足りない、というのです。
 治療は「エビデンス・ベイスド・メディシン」(=根拠に基づく治療)でなければならないし、その治療を受けるに際しても、「ペイシャント・セルフ・デターミネイション・アクト」(=患者の自己決定権)が行使されなければならない。
 そして、医師専門家から、きちんと説明を受けた上で、患者は自己決定権に基づいて、最も納得できる治療法を選択できねばならない、といいます。
 それが、「インフォームド・チョイス」です。
 当然に、医師は、あらゆる治療の可能性に精通し、すべての治療法を提示し、そこから患者に治療法を選択してもらわねばなりません。
 最新治療法のすべてに目を通していない医師は、責任を負えないことになります。

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 これは、我々税務専門家にも、そのままあてはまります。
 税金制度は複雑の一途をたどり、そのマネージメント次第で、お客様の税金は、計り知れない結果を生みます。
 バブルが崩壊して10年。
 所得税対策・相続税対策を「専門家」のすすめに従ったばっかりに、「節税対策破産」を迎えている例が、そこかしこにあります。
 お話を伺うと、よくわからないけど、そう言われた、と、10年前の資産シミュレーションの「提案書」を後生大事に持っていらしたりします。
 その救済のために、いままた「節税」を唱う専門家さえいるほどです。
 
 基軸を戻しましょう。
 主人公は誰でしょう。
 お客様ご自身が、自分の人生の主人公として、自分の資産や経営や家族や税金の方針決定権を持つべきです。
 専門家は、お客様にもっともよい方針を決定していただくためにこそ、すべての知識と能力と誠実を注ぐべきです。

 税務や会計の専門家は、最新の知識を整えて、最大限の知識と可能性と方法を試算し、提示し、きちんと理解していただき、お客様に選択していただき、そしてその後の経済変動・税制改正の説明を行いながら、アフターフォローにも同行すべきです。
 少なくとも、資産・経営の専門家は、お客様の生涯に寄り添うだけの資質と覚悟が必要でしょう。
 
 お医者様の世界では、ようやく専門家責任の基本の一歩を踏み出したようです。
 我々税務専門家も、お客様の深い信任にこたえるべく、もっともっと猛勉強し、データをとり、お客様に深くお話を伺い、お客様に主人公として選択していただけるようにがんばらねば!と決意しています。
                 Sep.23rd. 2000 みゆき wrote.

by expresstax | 2001-01-01 00:00 | プロフェッショナル  

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