固定資産の交換と、交換自己否認、そして相続税取得費加算
 今日のご相談です。

 相続で、意に反して、兄上の自宅の敷地を相続させられてしまった弟様。
 
 なんとまあ、困った話ですが、実は、よくあります。

 相続税の申告期限に迫られて、後先考えずに遺産分割してしまった様子が見て取れます。

 ☆  ☆  ☆

 兄上は、近くの市街地農地を相続取得されています。

 それで、弟の持つ兄の自宅の敷地と、兄の農地を交換すれば、兄は、土地家屋とも自分の土地になり、弟は、農地を売却して、現金化することができます。
 評価額は、ほぼ一緒になるそうです。

 こんな交換が可能でしょうか?

 そのままではアウトです。

 固定資産の交換特例(所得税法58条)の要件のひとつに、同種の資産を交換して同一用途に供すること、というのがあります。

 土地と土地の交換ですから、同種資産要件は、OK。

 農地と宅地の交換では、用途が違うので、ダメなんですね。
 
 兄上が、農地と同一用途にするために、自宅敷地を畑に耕せば、なんて、マンガみたいな話しになります。

 で、検討していただいて、兄上が、農地を転用して宅地にしてから、然る後、交換。

 こうすれば、OKです。

 通常は、農転に時間やお金がかかるので、腰砕けになりがちなんですが、今回は、兄上が「俺が造成費を出そうじゃないか」と英断なさったところがポイントです。

 ご相続から3年内なので、相続税を譲渡原価算入できる取得費加算特例が使えます。

 固定資産の交換は、譲渡をなかったものと見なすので、この取得費加算が使えるんだろうか、もったいない、という疑問が次に出たようです。

 これも、OKです。

 売却して現金化するのは、弟様。

 弟様は、兄自宅敷地を時価で売って、元農地を時価で取得して、民法上の交換をしますが、兄自宅敷地の売却について、所得税法の交換特例は適用せずに、自己否認します。

 相続取得で、土地はほとんど含み益。含み益を実現して、譲渡所得が算定されます。

 このとき、取得費加算制度を適用して、譲渡税をほとんどゼロにします。

 そしてすぐさま、交換取得した元農地を第三者に売却しますが、そのときは、元農地の売却原価は、時価まで引き上がっていますから、譲渡所得はゼロ。

 つまり、譲渡税はかからずに済みます。

 ☆  ☆  ☆

 ご相談者様は、安心なさったようでした。

 ただ。

 兄上が負担なさる造成費が、交換価格の2割をオーバーしないよう、要注意です。

 さらに。

 本当は、そもそも、ご相続の時点で、兄自宅敷地は兄が、売却予定農地は、弟が、と遺産分けできていれば、登記の登録免許税は、相続登記の際の、当時0.2%で済んでいたはず。
 
 今回は、交換したことにより、兄は、相続登記費用+交換登記+不動産取得税、弟は相続登記費用+交換登記費用+不動産取得税が、よけいにずっしり、かかってしまいます。

 それでも、放置するより、100倍、ましです。

 ご兄弟のご決断、それを支援なさっている相談者様に拍手、です。

 ☆  ☆  ☆

 不具合な権利関係は、一刻も早く調整して、解消すべきです。

 遅れれば遅れるほど、泥沼になります。

 そこに、税務判断と意思決定の重要性があります。
by expresstax | 2006-07-06 23:33 | お仕事

税理士飯塚美幸のひとことメッセージ
by expresstax
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 人に会うのが大好きで、現場第一主義。
 この職業を選んだのも、たった一度の人生で、いろんなお立場の、いろんな職業のお客様と人生をともにして生きていく素晴らしさと醍醐味を知ってしまったから。
 相手を信じて情熱で意気投合してしまう。
 税理士の仕事は、お客様の人生と懐にしっかりと寄り添って、ともに手を携えて生きていくことだと信じる。 

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