税理士飯塚美幸のひとことメッセージ

by expresstax

借地人さんご挨拶-物納と売却と

 今日は、相続人様と一緒に、借地人さん巡りをしました。
 (先日の現地調査のご相続とは、別なご相続です。念のため。)

 想定される相続税のために、

 ご生前からたくさんあった底地の物納を準備なさっていたのですが、

 昨今の不動産価格の上昇から、売却を打診したところ、

 なんと、ほとんどの借地人さんから、買取希望の手が上がったため、

 そのご挨拶に伺ったのです。

 ☆  ☆  ☆

 相続税の納税は、原則、金銭一括納付です。

 しかし、純財産額に対し、最高50%で課税される苛酷な相続税です。

 現金納付が困難な場合は、分割払いの延納、それも困難な場合に、相続財産そのもので納める物納の制度があります。

 相続税対策とは、即ち、納税対策です。
 
 どんなに相続税を引き下げても係ってしまう場合には、いかに払うか、が重要になります。

 仮に、相続財産が、高値で売却できれば、その譲渡税引き後の手取りから納税に充てられればよいのです。

 が、売却が、首尾良くできるとは限りません。

 そのために、最悪でも、物納が可能なように、という方針で、相続税準備をします。

 ☆  ☆  ☆

 物納と売却の共通点は、

 物納は、つまり、国に対して、譲渡税非課税で売却する一種の譲渡といえることです。

 相続人様にとっては、手放してしまうことにはかわりないからです。

 相違点は、

①物納は、相続税申告の課税価格で納めますから、価格見込みがつきます。

 売却は、とにかく、売りに出してみないと分かりません。

②物納は、譲渡税が非課税です。手数料は原則かかりません。
 ただし、相続税が多くても、取得費加算の特例が使えないため、もったいない、ともいえます。
 
 売却は、譲渡手数料を負担したうえで、譲渡税課税後の手取りで納付します。費用がかかります。ただし、取得費加算の特例が使える場合もあります。

③物納は、適格要件を満たすために、資産の測量や境界査定、埋蔵物撤去などが義務付けられ、費用は全て納税者負担です。

 売却は、買主さんによっては、現況有姿売買も可能で、費用が軽く済む場合があります。

④物納は、国の財産として収納されねばならないために、時間がかかり、その采配はすべて国税局と財務局次第です。

 売却は、測量やデューデリの条件整備次第で、速いテンポで進めることができます。

⑤物納は、収納後は、国は、公売にかけ、原則として最も高い価格で落札する相手に引き渡します。その落札者が誰になるかは、もう、相続人さんには、口出しできないことです。

 売却は、とりあえず、相続人様が買い主を選ぶことができます。
 
 価格を気にしなければ、気に入った相手に売却することも可能です。

 仮に、相続人様のご自宅のお隣などですと、これは、けっこう、重要なポイントです。

⑥借地人さんにとっては、物納は、国(=財務省)が地主となり、

 契約変更、地代改定など、手続きが厳格になります。

 物納後も、国は3年ごとに買取を請求してきます。
 
 それなりにストレスが伴います。

 売却は、借地人さんにとっては、完全所有権になりますから、借地契約に縛られることなく、将来の建て替えや改築など、自由に行えるようになります。

 不動産の上昇局面では、買取希望が多いのは当然です。

 借地人さんが底地買取するうえでの、融資もつきやすくなっています。
 
 ☆  ☆  ☆

 この数年は、不動産については、売却価格が、路線価を上回るケースが多かったのです。

 もし、良い価格で買い取ってもらえるなら、売却のほうが、相続人様には、遙かにお気持ちがラクになります。

 そこで、今回も、物納の準備をしつつ、財産の多くを占める物納予定財産=底地について、まず売却を打診することにしました。

 ところが、打診してみると、ほとんどの借地人さんが、買取の意向を表明してきたのです。

 相続人様も、これには、びっくりでした。
 
 そこで、急遽、不動産のプロにお願いして、まず売却の方向で、借地人さんとの交渉にはいってもらうことにしたのです。

 底地売買は、細かで複雑、神経を使う交渉が多いわりには、価格が低いため、仲介手数料が少ない、と、積極的でない不動産業者さんが多いのですが、快く引き受けてくれました。

 ☆  ☆  ☆

 相続人様と、不動産業者さんと、担当税理士のIさんと一緒に、1軒、1軒、ご挨拶します。

 借地人さんたちは、長い借地契約の中で、

 家作を整え、お庭を綺麗にしつらえ、

 お店を繁盛させ、

 大切に住まわれている様子が見て取れました。

 機会があれば、やはり、ご自身の土地にしたいのだろうなあ、と感じられる、

 丁寧なお住まいばかりでした。

 こちらが税理士だと分かると、税金のことを聞かれる方もいます。

 地主である相続人様にとっては、

 これからも同じ町で一緒に暮らして行かれる方々です。

 みなさんにお会いできてよかったですね、と話しながら帰ってきました。

 お会いして、お顔を合わせてお話しできるのが、なによりです。
 
 この後は、相続人様は表に出ず、不動産のプロと我々で、全てを進めていきます。

 ☆  ☆  ☆

 この売却のお話の進展を受けて、遺産分割の更なる調整を行います。

 売却なら、取得費加算を使える相続人様に付けたいところですし、

 物納なら、物納許可を受けられる財力の相続人様に持って頂かねばなりません。

 まさに、相続税申告の、山を迎えています。 
by expresstax | 2006-06-26 23:49 | 相続・贈与