税理士飯塚美幸のひとことメッセージ

by expresstax

亡くなった年の所得には住民税非課税

 今年出版した小規模宅地本についてご質問をいただきました。
 ありがとうございます。

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 「小規模宅地特例-実務で迷いがちな複雑・難解事例の適用判断」というタイトルですので、
 こんなん、ちっとも難解じゃね~よ!と言われちゃうよね~、とヒヤヒヤして書いたものです。

 この前身の月刊税理に連載していた
 「ミユキ先生とヤマダ君の-小規模宅地特例、落ちてはいけない落とし穴」のタイトルのときも、
 そんなんじゃ落ちねーよ!といわれそうで、やっぱりヒヤヒヤして書いていました。

 ☆  ☆  ☆
 

 ご質問は、小規模宅地本の事例の中で、「資産買換途中の相続発生と特例適用」に関するものです。

 所長と職員君が、
 メインのお話しの後で、

 相続開始年の譲渡については、所得税はかかるけど、住民税がかからない、
 だから相続人様のご意向によっては、買換取得そのものを実行するかどうか、
 現金化してしまった方がいいか、
 また、買い換えするにせよ、将来に課税繰り延べする買換え特例を適用しない方がいいかも、
 という点についておしゃべりしています。

 これに対し、「なぜ住民税が課されないのか」というご質問です。

 例えば、被相続人が平成25年中は不動産所得だけ有し、平成26年1月に不動産を譲渡して、平成26年3月に亡くなったとしましょう。

 所得税は亡くなった日までの所得について課税されますが、住民税は、亡くなった日の属する年の所得については、課税が行われません。
 事例の場合は、1月に譲渡した資産について所得税は準確定申告により課されますが、3月に亡くなったなら、その年の所得について翌年度の課税の機会がなく、住民税が課されないのです。

1.住民税の課税方式

 個人住民税の納税義務者は、国籍を問わず、1月1日現在の住所地で、
 前年の1月1日から12月31日までの1年間の所得に応じて課税されます。

 
2.住民税の納税義務

 住民税の納税義務は、その年1月1日現在で判定されます。

(1)平成26年1月1日現在は存命していますから、前年平成25年分の不動産所得をベースとして平成26年度住民税が課されます。
 住民税の納付は原則として4月以後ですから、未払で亡くなったとしても、その納税義務は相続人が承継します。

(2)平成26年1月に譲渡した不動産譲渡所得については、平成27年の住民税の課税対象(課税標準)になります。
 しかし、平成27年1月1日には、被相続人は亡くなっていますから住民税の納税義務者ではありません。したがって、平成26年1月の譲渡については、住民税が課されないことになります。
 これは、相続に限らず、年の中途で国外に出国して翌年1月1日に日本に住民票がない場合は、同様に平成26年度住民税は課されません。

(3)存命していて、単に日本国内で異動しただけであれば、旧住所地で課税されない代わりに1月1日の住所地で課税を受けますが、相続や出国の場合の住民税は、日本での納税義務がなくなるのです。

3.所得税との違い
 所得税は、平成26年1月1日から相続開始日までの平成26年中の被相続人の所得について、相続開始を知った日の翌日から4月以内に準確定申告を行い、その納税義務や還付請求権を相続人が承継します。(所得税法125条)
 国外に出国する場合も同様に、1月1日から出国日までの所得を出国時までに準確定申告することとされています。(所得税法127条)
 したがって、年の中途で死亡した場合のその年中の所得には、所得税だけが課税されることになります。

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地方税法第32条 (所得割の課税標準)

 所得割の課税標準は、前年の所得について算定した総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額とする。

地方税法第39条(個人の道府県民税の賦課期日)

個人の道府県民税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする。
(市町村民税も同様です。)

所得税法第125条(年の中途で死亡した場合の確定申告)

 居住者が年の中途において死亡した場合において、その者のその年分の所得税について第120条第1項(確定所得申告)の規定による申告書を提出しなければならない場合に該当するときは、その相続人は、第3項の規定による申告書を提出する場合を除き、政令で定めるところにより、その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から4月を経過した日の前日(同日前に当該相続人が出国をする場合には、その出国の時。以下この条において同じ。)までに、税務署長に対し、当該所得税について第120条第1項各号に掲げる事項その他の事項を記載した申告書を提出しなければならない。
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 そういえば、
 この小規模宅地特例本についてのご質問が、
 先日ここでも書いた「広大地評価後に小規模宅地特例を適用できるか」など、
 小規模宅地特例そのものについてというより、
 事例に触れた関連事項へのご質問が多いようです。

 この書籍では、相続と小規模宅地特例まわりのさまざまな事例と
 ブレーンストーミングのプロセスを書いています。

 そのために、小規模宅地特例ズバリでない関連事項については、
 説明・解説を省略したり、簡単にスルーしてしまっているんですね。

 単行本として、ページ数をあまり増やせないという制約の中で、
 他の書籍では多く取り入れられている条文や通達・質疑応答も、ばっっさりカットしてしまっています。
 申し訳ありません。(>_<);;

 でも、このことは、読者様が、実務やご自身の事案の中で、
 とてもよく読みこんでくださっているということなんだと気付かされます。
 ありがとうございます。

 説明していない部分は、他にもごっちゃりありますから、
 出版社さんを通じてでも、弊社ダイレクトでも、
 どんどんご質問いただければと思います。

 そのうえで、読者様が直面なさっているご相続問題の、少しでもよりよい解決のために、
 読者様と知恵と力を合わせていければと思っています。

 ありがとうございました。































 
 
 
by expresstax | 2014-12-05 23:36 | パブリッシング