税理士飯塚美幸のひとことメッセージ

by expresstax

無償返還届出をしない借地権の設定があったら

 ご質問をいただいて、そこからの議論です。

 個人所有の賃貸建物を、法人に売却した。権利金はもらっていない。
 その際に、借地権の無償返還届出書は出していない。
 ものの本には、法人が借地権利金の認定課税を避けるために無償返還届出書を出すとあるけれど、
 じゃあ、無償返還届出書を出さないとどうなるか、というものです。

 ベーシックなお話ですので、すこし整理してみましょうか。

1.無償での借地権設定の場合
 例えば、相続税評価1億円の土地上の建物を法人に売却した。
 建物売却額は、個人の帳簿価額とすれば、個人に譲渡課税はありません。

 では土地はどうか。
 個人が権利金なしの無償で借地権を設定させても、所得税では課税がないんですね。
 借地権の設定は、借地権の譲渡ではないという考え方で、
 所得税法のみなし譲渡(所得税法59条)の適用はないんですね。

 しかし借地権利金を払わずに建物所有に伴い生ずる借地権を取得した法人サイドでは、
 借地権利金相当額を受贈益として計上し、
 法人税で雑収入とされて、課税が行われます。
 借地権割合7割の地域だとすると、
 相続税評価7千万円を時価に置き直しての8,750万円受贈益について、
 法人税40%として3,500万円の法人税が課税されます。

 一般的には、無償設定で外部から1円も入ってこないのに法人税だけ多額に流出してしまう
 この時点で、選択肢からはずされます。

 じゃ、このときの相続税評価はどうか。
 地主は、底地評価。
 法人株価では、借地権時価8,750万円と簿価ゼロとの差額が純資産価額評価に計上され、
 法人税相当額42%控除後の5,075万円が株価にオンされます。
 株価評価上は、ちょい有利かもです。
 地主が株を持っていなければ、相続税は切り離しです。

2.借地権売買の場合
 次に、無償取得じゃなくて、8,750万円で、借地権を買ったらどうか。
 地主は、8,750万円の譲渡対価から5%の取得費を差し引いた譲渡益に20%の1,662万円の譲渡税課税です。

 法人は、借地権8,750万円/現金8,750万円ですから、課税関係はなし。

 こちらも、個人譲渡税のキャッシュアウト、法人は、収益移転にならなくなるとあって、選択されがたいでしょう。

 念のために相続税評価はどうか。
 個人の土地は底地評価ですが、法人から受ける現金が時価でオンされますから、
 路線価と時価が理論値で機能する限り、相続税は増加します。
 法人は、取得3年内は、時価で資産債務を計上するため、プラスマイナスゼロでしょうか。
 3年経過すれば逆ざやになる効果はでますが、通常の投資資産取得と同じですね。

3.現物出資の場合

 では、借地権設定の対価として現金でなくその法人の株をもらう、
 つまり現物出資とした場合はどうか。

 法人は資本の増加になるので、課税関係はなし。
 個人地主は、借地権の設定だから譲渡ではない、のではなく、
 株式という対価を得るので、譲渡課税です。

 じゃ、その譲渡価額は、借地権の時価か、というとそうではなく、
 その現物出資された借地権を加えたところで算出されるその株式の時価なんですね。
 したがって、1の法人株価で算定した株価となるのですが、でもこれって一種、循環計算ですよね。
 理論上はさておき、結局、出資資産時価相当額でしょうか。

 じゃ、相続税評価はどうか。

 個人地主は株をもつので、相続税対象財産として計上される。
 ただし評価は相続税評価額。
 もしや法人化として後継者メインの株主構成をとっていたものが、
 地主である当主メインに株主構成がひきもどされてしまうかもしれない、ということで、
 これも選択しがたい、ということになりますね。

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 所用で、芝方面に行って来ました。

 愛宕通りの青松寺とフォレストタワーのあたりです。
 街路樹の桜が紅葉しています。
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 日比谷通りをまっすぐ。みなと図書館の緑地から東京タワー方面です。
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 イチョウも一気に色づいています。
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by expresstax | 2011-11-28 23:47 | 相続・贈与