賃貸不動産経営管理士研修講演、そして譲渡所得損益通算規制への最高裁判決

 賃貸不動産経営管理士研修の講演でした。
 平河町の全国都市会館です。
 私の担当は、所得税・相続税・譲渡税・固定資産税の基礎編です。
 
 びっしり300人以上の受講生さんは、若い方が目立ちます。
 管理士の制度が周知され、全国の大手の会社さんが、
 新人さんをどんどん送り込んできている様子が見て取れます。

 制度がメジャーになり、資格が認知されてきたからなのでしょう。

 先行して講演なさった建築士の先生が、
 若い人が多いから、つい説明が増えてしまって時間延長になった、と
 おっしゃっていたそうですが、ほんとにそうです。
 
 とても熱心に聞いていただけました。
 ありがとうございました。

 これからの誇り高い賃貸管理士として、
 オーナー様の、入居者様の、お役に立つ管理士として成長してくださいね。

 ☆  ☆  ☆

 この9月22日、譲渡所得損益通算規制への最高裁判決が下りました。
 棄却です。

 平成15年12月17日、税制改正大綱に、忽然と登場した不動産譲渡損失の、
 他の所得との損益通算規制。
 不動産譲渡損が出た場合に、他の給与や事業・不動産譲渡の利益と損益通算して、
 通算後の所得で課税を受けるという制度がそれまで。

 この規制が、つまり、損益通算はできず、
 譲渡損失は、居住用財産の譲渡損などの例外を除いては、なかったものとみなされるという制限が、
 わずか15日後の翌平成16年1月1日から始まったのです。

 この改「正」が国会を通ったのは、翌年3月31日だったのに、法施行日は1月1日。
 納税者に不利益な制度にもかかわらず、遡及適用されたのです。
 まるで「後出しじゃんけん」のような改正です。

 改正法成立前の1月から3月までの間に譲渡損失を生じた納税者は、
 全国で、訴訟を提起していました。
 最初の福岡地裁では、憲法違反として納税者勝訴でしたが、その後は、他の訴訟も連敗
 その最初の最高裁判決は、違憲ではないとの今回の判決です。

 ☆  ☆  ☆

 納税者さんは、国民への制度周知の不十分を主張したと思いますが、 
 これに対し、国は、法成立以降の適用とすると、
 駆込み譲渡が起き、地価下落に拍車をかけてしまうという理屈から、
 遡及適用を断行したのですね。

 最高裁判決は、16年度改正大綱が発表された直後から、資産運用コンサルタント、不動産会社、税理士事務所等によって平成15年中の売却の勧奨が行われたのだから、
 駆け込み譲渡を危惧しての遡及適用は、公益上の要請に基づくものであったとしています。

 確かに、弊社も、平成15年12月、新聞ではほとんど報道されなかったこの改正情報を、
 ある研究会ルートから事前入手し、
 大綱発表前日に、「エクスプレス情報」としてリリース。
 含み損を抱えたお客様の不動産について、一斉に譲渡の段取りをつけ、実行していただきました。
 当時の社員さんたちは、ひたすらお客様のために、ほんとうによくがんばってくれました。
 その後、お客様たちから、どれほど感謝されたかわかりません。

 でも、判決では、それも遡及適用の理由だと言っているのですね。

 ここで、最高裁の裁判官が、完全にカンチガイしているのは、判決で、
  
 「操作性の高い投資活動等から生じた損失」だの、
 「損益通算で、税負担の軽減を目的として土地等を安価で売却する」だの、
 と書いている点です。

 譲渡損失は、操作性や安価で売る投資行動から生まれるのではなく、
 地価下落の趨勢の中で生じてきた含み損が実現して生じるものなのです。

 弊社のお客様の駆け込み譲渡についても、含み損を実現させただけなのです。
 そしてその含み損こそ、
 抗いがたい、地価の未曾有の下落によって生まれたものです。

 仮に、百歩譲って、
 土地等の売却が投資活動であるとして(そんな個人がいるとは思えませんが)、

 好きこのんで損失を出す、という行動を、どこの投資家が行うでしょうか。
 税の軽減は、損失額を、絶対にカバーできないからです。

 こんな幼稚園児にもわかる算数ですのにね。

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 こんな不利益遡及が最高裁で支持され、
 このあとも、平成22年改正で、措置法36の2の居住用財産の譲渡対価制限が、
 やはり1月1日に遡及して適用されても、見過ごされています。

 譲渡損失の損益通算規制の遡及適用が裁判に上ろうが、
 政権が変わろうが、
 法改正を起草するお役人は、遡及適用について慎重になる姿勢はありません。
 何ら、変わっていないのです。

 切ない国の、切ない租税法実務に携わる職業専門家として、
 切なく判決文を読んでいます。

by expresstax | 2011-09-29 23:47 | パブリッシング  

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