年度越えの継続税務調査

 ご質問をいただきました。

 今年の上旬に税務調査があったのだが、決着がついていない。
 数ヶ月税務署からは連絡がなかったが、最近になって、
 新たな資料の提出を求められた。
 今頃言うとは何ごとかと、といったん拒絶すると、またその後連絡が途絶えた。
 どうしたものか、というご質問です。

 ☆  ☆  ☆

 国税さんは、6月が事務年度の切り替えで、7月10日が人事異動の発令日。
 今年は7月11日でした。

 そのため、調査官さん自身に異動があってもなくても、
 通常の調査は、5月頃には、締めに入って、6月末には完了です。

 ただし、問題事案については、場合によっては、次事務年度への継続調査とします。

 自分が異動しなければ、継続しますし、
 異動するなら、新たな担当者さんへ引き継ぎます。

 この事案では、継続調査にするつもりで、連絡してきたのでしょうが、
 ご質問者様の強い態度に、調査官さん、頭を抱えているのかもしれません。

 ☆  ☆  ☆

 継続調査ということで、思い出した事案があります。

 その調査も、長く、数ヶ月に及んでいました。
 明らかな非違(=申告の間違い、過小な申告)であれば、
 納税者様も、修正申告に応じるのですが、
 数十年も昔のことで、記録も証拠も明らかではありません。
 税務署は、明らかな証拠がないまま、推測だけで、修正申告を求めてきていました。
 納税者様は、納得できない申告はできない、と拒否。
 どうしてもというなら、更正(税務署から決定)してもらうしかないだろうと、対応していました。

 そして事務年度を越えて、継続調査に突入しました。

 新事務年度になって、税務署から、呼び出しがかかりました。
 納税者様と、ご担当の先生方、そして私も付き添って、所轄に赴きました。
 ご担当の先生サイドでは、これ以上長引かせてもよくない、という判断だったと思います。

 所轄に向かう途中、集合場所の喫茶店で、事前の打ち合わせをしました。

 担当の税理士先生は、調査官の指示する内容で算定した修正税額を納税者様に提示、
 説明を始めました。

 と、納税者様は、顔を上げて、「これは認めなきゃいけないんでしょうか」と不安そうに、
 私をみて、聞かれました。
 私は、これまで通り、「いえ、自分で納得できないものを無理に認める必要はないですよ。」とお答えしました。
 ほっとした納税者様のお顔と反対に、瞬間、税理士先生たちのお顔に緊張が走りました。
 困ったなあと思いました。先生方のお気持ちも、とてもよくわかるからです。
 一行は、その話はそのままに、税務署へと向かいました。
 きっとそれぞれに、困ったなあと思いつつ、同道したのだと思います。

 ☆  ☆  ☆

 所轄署につき、打ち合わせ室で我々が待っていますと、
 担当調査官と、新しく人事異動で着任した上司の統括官が着席しました。

 挨拶を済ませて、簡単に説明したあとです。

 上司の統括官がおもむろに口を開きました。
 そして、調査をこれで終了させるというのです。
 長い間、ご迷惑をかけた、とも言います。

 我々税理士たちと納税者様は、一瞬あっけにとられましたが、
 なるほど、新年度の着任統括官が、はっきり裁定したのだろう、
 それでこそ、と、納得しました。

 と、納税者様が、目に涙を浮かべ、こぶしでぬぐわれました。
 ほっとした気持ちと、これまで聞き届けられなかった口惜しさとが、
 一度に、吹き出したのでしょうか。

 こうして我々は所轄署をあとにしましたが、
 税務署の門を出ると、納税者様は、「ありがとうございます」と繰り返し、
 先生のおかげです、と何度も、お礼を言われました。

 お礼をいうのはこちらです。このまま認めたら、
 我々は、何を頼りに法律を守っていいか、わからなくなります。
 ありがとうございました、と、納税者様の肩を抱きしめました。 

 ☆  ☆  ☆

 忘れられない税務調査の記憶です。
 思い出すたびに、心を引き締めるのです。

 ご質問者様の調査が、適切に、無事に終了しますように、お祈りしています。
by expresstax | 2011-07-22 23:31 | 税務調査


税理士飯塚美幸のひとことメッセージ


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自己紹介

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電話 03(5413)6511

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 人に会うのが大好きで、現場第一主義。
 この職業を選んだのも、たった一度の人生で、いろんなお立場の、いろんな職業のお客様と人生をともにして生きていく素晴らしさと醍醐味を知ってしまったから。
 相手を信じて情熱で意気投合してしまう。
 税理士の仕事は、お客様の人生と懐にしっかりと寄り添って、ともに手を携えて生きていくことだと信じる。 

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