年度越えの継続税務調査   

2011年 07月 22日

 ご質問をいただきました。

 今年の上旬に税務調査があったのだが、決着がついていない。
 数ヶ月税務署からは連絡がなかったが、最近になって、
 新たな資料の提出を求められた。
 今頃言うとは何ごとかと、といったん拒絶すると、またその後連絡が途絶えた。
 どうしたものか、というご質問です。

 ☆  ☆  ☆

 国税さんは、6月が事務年度の切り替えで、7月10日が人事異動の発令日。
 今年は7月11日でした。

 そのため、調査官さん自身に異動があってもなくても、
 通常の調査は、5月頃には、締めに入って、6月末には完了です。

 ただし、問題事案については、場合によっては、次事務年度への継続調査とします。

 自分が異動しなければ、継続しますし、
 異動するなら、新たな担当者さんへ引き継ぎます。

 この事案では、継続調査にするつもりで、連絡してきたのでしょうが、
 ご質問者様の強い態度に、調査官さん、頭を抱えているのかもしれません。

 ☆  ☆  ☆

 継続調査ということで、思い出した事案があります。

 その調査も、長く、数ヶ月に及んでいました。
 明らかな非違(=申告の間違い、過小な申告)であれば、
 納税者様も、修正申告に応じるのですが、
 数十年も昔のことで、記録も証拠も明らかではありません。
 税務署は、明らかな証拠がないまま、推測だけで、修正申告を求めてきていました。
 納税者様は、納得できない申告はできない、と拒否。
 どうしてもというなら、更正(税務署から決定)してもらうしかないだろうと、対応していました。

 そして事務年度を越えて、継続調査に突入しました。

 新事務年度になって、税務署から、呼び出しがかかりました。
 納税者様と、ご担当の先生方、そして私も付き添って、所轄に赴きました。
 ご担当の先生サイドでは、これ以上長引かせてもよくない、という判断だったと思います。

 所轄に向かう途中、集合場所の喫茶店で、事前の打ち合わせをしました。

 担当の税理士先生は、調査官の指示する内容で算定した修正税額を納税者様に提示、
 説明を始めました。

 と、納税者様は、顔を上げて、「これは認めなきゃいけないんでしょうか」と不安そうに、
 私をみて、聞かれました。
 私は、これまで通り、「いえ、自分で納得できないものを無理に認める必要はないですよ。」とお答えしました。
 ほっとした納税者様のお顔と反対に、瞬間、税理士先生たちのお顔に緊張が走りました。
 困ったなあと思いました。先生方のお気持ちも、とてもよくわかるからです。
 一行は、その話はそのままに、税務署へと向かいました。
 きっとそれぞれに、困ったなあと思いつつ、同道したのだと思います。

 ☆  ☆  ☆

 所轄署につき、打ち合わせ室で我々が待っていますと、
 担当調査官と、新しく人事異動で着任した上司の統括官が着席しました。

 挨拶を済ませて、簡単に説明したあとです。

 上司の統括官がおもむろに口を開きました。
 そして、調査をこれで終了させるというのです。
 長い間、ご迷惑をかけた、とも言います。

 我々税理士たちと納税者様は、一瞬あっけにとられましたが、
 なるほど、新年度の着任統括官が、はっきり裁定したのだろう、
 それでこそ、と、納得しました。

 と、納税者様が、目に涙を浮かべ、こぶしでぬぐわれました。
 ほっとした気持ちと、これまで聞き届けられなかった口惜しさとが、
 一度に、吹き出したのでしょうか。

 こうして我々は所轄署をあとにしましたが、
 税務署の門を出ると、納税者様は、「ありがとうございます」と繰り返し、
 先生のおかげです、と何度も、お礼を言われました。

 お礼をいうのはこちらです。このまま認めたら、
 我々は、何を頼りに法律を守っていいか、わからなくなります。
 ありがとうございました、と、納税者様の肩を抱きしめました。 

 ☆  ☆  ☆

 忘れられない税務調査の記憶です。
 思い出すたびに、心を引き締めるのです。

 ご質問者様の調査が、適切に、無事に終了しますように、お祈りしています。

by expresstax | 2011-07-22 23:31 | 税務調査

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