昔なら大家族で支え合うということも可能でしたが、
長命になった現在、介護の期間が長期化し、
家庭内の介護者が、お嫁さんや娘さんなど、人数が限られ、
介護の交代もできないという
過酷な状況さえ生まれます。
80歳代の親御様を、60歳代の娘さんが看る、という光景も増えています。
自ずから、介護施設への依存度が高まりますが、
特別養護老人ホームは、極めて少数で、なかなか入居できるものではありません。
勢い、特養以外の老人ホームへ入居せざるをえなくなり、
そうすると施設側は、入居者の途中で追い出されるのではないかという懸念を消すために、
終身利用を謳います。
仕方なく、終身利用の特養以外の老人ホームに、入居し、亡くなった場合、
そこが住所でしょ、とばかりに、
相続税の小規模宅地の居住用の特例の適用が、問題視されています。
相続税の小規模宅地の特例のうち、特定居住用宅地の特例は、
亡くなった方の自宅敷地を、配偶者や同居親族が相続したり、住み続ければ、
土地の評価を72坪まで8割減額できるという制度です。
相続税での、大きな救済特例です。
☆ ☆ ☆
平成22年4月移行の小規模宅地の特例制度改正により、
そもそも、老人ホーム入居後の自宅を配偶者が相続するか、
同居親族が相続しない限り、
小規模宅地の特例は適用不可、ゼロ減額となっています。
22年3月までは、入院や老人ホーム入居で、自宅が空き家になっていても、
そこが被相続人の住所だとみられれば、
5割減額は可能でした。
今は、入院だろうが、特養入居だろうが、
空き家になった自宅は、ゼロ減です。
☆ ☆ ☆
では、配偶者が相続したり、
同居の娘さんなどが、引き続き居住していた場合でも
、
終身利用権付き老人ホームだから、自宅は居住用じゃないよね、と、
特例を受けられなくなり、
配偶者や同居の娘さんは、減額なしの高額な相続税負担で、
結果的に、自宅を追われるようになるならば、
そもそも、小規模宅地の特例の政策趣旨は、いったいどこにいってしまうのでしょう。
介護の問題を抱えたお客様に、
税理士は、どう説明したらいいのでしょうか。