ご当主様のお気持ち、そして百日紅

 資産のプロからのご相談です。

 大変なご資産をお持ちのご一族へのお手伝いをなさっているそうです。
 奥様や子供たちで、資産管理会社を設立。
 長期の期間を経て、自然発生借地権などで、法人へ資産移転を図ってきました。
 
 ところが、途中から、地代が、急上昇しています。
 もちろん無償返還届出など提出していませんので、 
 そのままなら、借地権が、法定借地権割合まで法人に移転していたものを、
 高額地代のやりとりで、減殺効果となっています。

 それどころか、
 ご当主様は、相続税対策に、気乗り薄で、
 むしろ、逆相続対策とも受け取れる行動をお取りになって、
 奥様やお子様は頭を悩ませている、と。

 よくよく、お尋ねになると、
 ご当主様は、法人株式は、持っているものの、
 会社経営には、ノータッチだと。

 うーん、原因は、そこじゃないでしょか。

 例えば、贈与。
 例えば、法人化。

 いずれも、「相続税対策」の名のもとに、
 ご当主様から、収入や資産を、引き離す対策です。

 ご当主様は、それまでご自身の資産として、
 その蓄積の様子を、目を細めて楽しみにしてきたのに、

 体よく、自分から引きはがされていくような
 気持ちになってしまわれているのではないでしょうか。

 これは理屈ではありません。
 生理感覚です。
 自分の通帳に入ってきた収入が、
 ある時から、消えてしまう。
 その行き先が法人だとか、息子だとか、言われても、
 それは、自分の管理下には、ない。

 これは、寂しいものです。
 
 当初は、理屈で、ご自身を納得させようとしても、
 しばらくすると、積極的ではなくなったとしても、
 これは不思議ではありません。

 ご専門家の方々の中には、
 法人化し、
 贈与したら、
 もう、ご当主様は関わってはいけないような、
 ご当主様が関わったら、まるでそれは名義資産だと言われてしまう、という怯えから、
 法人や贈与資産から、ご当主様を切り離してしまうような指導があるようです。

 これは、いけません。

 ☆  ☆  ☆

 法人化したら、株式は、妻子に持たせたほうがよいでしょう。
 気になるなら、属人株にしたらよいのです。
 そうすれば、法人は、思う存分収益を伸ばし、資産を蓄積しても、
 相続税の課税対象外です。
 ご当主様の持株が少なければ、気にすることじゃありません。

 それより、会社の代表権は、ご当主様が、きっちり、持つべきです。
 そして、後継者様をオンザジョブトレーニングで、鍛え上げて、
 後継者様が育つまでは、ご当主様が、会社を経営しなければなりません。
 当然、会社の通帳は、代表者であるご当主様が握るべきです。
 会社に蓄積される内部留保は、そのまま、ご当主様の一族の資金です。
 ご当主様は、その成長にこそ、努力すべきです。

 贈与しても、同じです。
 贈与して、子供に、その資産を渡した後が問題です。
 口を出し、指揮命令し、子供が立派に資産運用出来るように、指導するのです。
 運用報告書を、子に作らせて、報告させるのです。

 贈与者が、贈与資産の運用に口出ししたからといって、
 子が管理し、入出金し、自らの資産として運用していれば、
 名義資産との認定など、不可能です。
 
 子供には、魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えろ、という諺どおり、
 きちんと指導する責任が、ご当主様にはあります。

 それは資産を所有する方にとっては、
 かけがえのない「生き甲斐」でもあります。
 
 その生き甲斐を剥奪されてしまうとしたら、
 それは、とても残酷なことです。

 その大事な責任や生き甲斐から、ご当主様を切り離してしまうという、
 形式的な、「相続税対策」指導が、氾濫しているのは、困ったことです。

 ご相談者様には、そもそものご一族の仕組み作りから見直していただくように、
 一緒に、お手伝いして差し上げて頂けるようにお願いしました。

 今週の賃貸住宅フェアでは、「やってはいけない相続税対策のポイント」という、
 とてもネガティブなタイトルで講演しますが、(泣)
 こんなお話も致しましょう。

 ☆  ☆  ☆

 中庭の百日紅(さるすべり)の花です。
 淡い藤色です。
 スコールのような雨で、だいぶ落ちてしまいました。
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by expresstax | 2009-08-03 23:13 | お客様

税理士飯塚美幸のひとことメッセージ


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